太極拳ミニ知識

1.太極拳には流派があります。
 代々継承して来た一族の名前に流派を現す「式」をつけて、楊式、呉式、孫式、武式、陳式などとよばれています。現在は、こうした流派の代表が集まって制定した「二十四式」が広く普及しています。

2.太極拳は拳法です。
 では、どういう武術かと言うと、拳法の一種で、「内家拳」という種類に属します。中国拳法には、「内家拳」と「外家拳」があります。「外家拳」では身体の外側の強さを鍛えることに重点をおき、「内家拳」では身体の内側のエネルギーを用いる方法を訓練します。太極拳は内家拳のなかでも最も身体意識の重要性を強調しています。意識の用い方、身体のバランス、そして一切の無駄を取り除いた動き方を習得し、さらに、太極という「物事の考え方」の理解を深めてゆくことで、「意を用いて力を用いず」という境地にいたることを目指します。かつて、太極拳の達人とよばれた楊露禅(よう・ろぜん)は、あらゆる武術と戦って敗れず、しかも、相手を傷つけずに制したことから「楊無敵」と讃えられ、このことが「徳の高い武術」であると評判になり、皇帝や貴族の師範に迎えられたといわれています。

太極拳の四文字熟語

太極拳には色々な四文字熟語があります。ここでは代表的なものをご紹介します。これらの言葉は、上半身は虚にして、下半身はも緩めながら実して地につながっている状態(「上虚下実(じょうきょかじつ)」といいます)になるために必要なことを示しています。まずは、先生のやることを目でみて、正しく理解しましょう。そして、それを自分の身体で体験できるように練習しましょう。
  1. 虚領頂勁(きょりょう ちょうけい):首筋を伸びやかにし、上空より糸で頭頂部を弦られている感覚。
  2. 含胸抜背(がんきょう ばっぱい):胸の力を抜き、背中に意識を持ち広げられる感覚を身体に付ける。
  3. 鬆腰(そんやお)鬆袴(そんくわ):腰を緩めさせ、袴を柔らかく動かせるようにする。
  4. 虚実分明(きょじつ ぶんめい):両足の虚実をしっかりと分ける。套路では、重心の移動を十分行う。
  5. 沈肩墜肘(ちんけん ついちゅう):肩・肘から力を抜き、肩を沈め、肘を落とすこと。肩、肘に力がのこっていると、勁(けい)の通りが苦くなる。
  6. 用意不用力(ようい ふようりき):力を抜き意識によって動作を導くこと。
  7. 上下相随(じょうげ そうずい):力を抜き意識によって動作を導くこと。
  8. 内外相合(ないがい そうごう):心と身体が一致していること。套路の一つひとつの動きの意味を知ることによって、意識と身体が一致する。
  9. 相連不断(そうれん ふだん):大河の流れの如く、動きが途絶えないこと。
  10. 動中求静(どうちゅう きゅうせい):心を穏やかに保つこと。
  11. 立身中正(りっしん ちゅうせい):身体の背中よりに後頭部から身体がまっすぐに保たれ、伸びやかに安定していること。